お知らせ

2012年4月から新潟大学大学院に共生経済学研究センターを立ち上げました!グローバルな視野を踏まえながら、地域目線の研究活動を企画していきます。今年度は新潟市における公契約条例制定の可能性について検討中です。

2012年8月24日金曜日

共生を脅かす、農薬公害問題(続報)

「疑わしきは罰す」(http://symbiosis-economics.blogspot.jp/2012/02/blog-post.html)で紹介したように、地球の真裏の国アルゼンチンでは、1990年代半ば以来、強力な農薬・殺虫剤とこれらに耐性を持つ遺伝子組み換え農産物(GM)が商業利用されています。そして内陸部地域を中心に、かなり前から健康被害という形で公害が発生しているようなのです。

実は昨秋(北半球でいえば今年の春)、被害者と思われる人たちがついに訴訟を起こし、その行方が注目されていたのですが、つい先日、アルゼンチン内陸部のコルドバ地裁第一法廷は、農薬の違法空中散布の罪で、関係者2人に執行猶予付き懲役刑と公共奉仕、向こう数年にわたる農薬使用禁止の判決を下しました(http://www.pagina12.com.ar/diario/sociedad/3-201610-2012-08-22.html)。これに対して被告側弁護士は、農薬散布はあくまで適法に行われたとして、控訴する見込みです。検察側は、最低限の目的は達成されたとして、控訴しない方針。家族に健康被害があった遺族ら原告住民は、判決が軽すぎると落胆したとのこと。

コルドバ州では、住宅地至近(500〜1500メートル未満)での農薬空中散布を禁じています。健康被害は10年前から問題化し、100名を超える被害者が出たとされています。多くは悪性腫瘍。問題の農薬は日本でも普通に使われているエンドスルファンとグリフォサート(日本では住友化学が扱っている、モンサントのラウンドアップがそれです)。EUやアルゼンチンなどでは前から毒性の強さが問題になっていて、今回の一件も、単に一部の悪質な農業者が違法な散布を行なっただけ、といった例外的事態にすぎないのかどうか、今後も引き続き追跡していく必要がありそうです。

ポスト・フクシマの時代、多くの外部不経済や社会的費用をまき散らす利益複合体、いわゆる「ムラ」は、原子力だけにとどまらず、実は社会のいたるところに浸透しているのではないかと、あえて疑ってかかった方が賢明かもしれません。事実、このブログを立ち上げた直後に指摘したように、たとえば「ガソリン・ムラ」とでもいえるものも存在しています。共生の経済をつくりあげていくためには、こうした「ムラ」のひとつひとつをあぶりだし、批判の俎上にのせることから始めなければなりません。今回の続報も、その一助になれば幸いです。