お知らせ

2012年4月から新潟大学大学院に共生経済学研究センターを立ち上げました!グローバルな視野を踏まえながら、地域目線の研究活動を企画していきます。今年度は新潟市における公契約条例制定の可能性について検討中です。

2012年11月7日水曜日

99%のための経済学【教養編】

2冊の新刊本と学会報告の準備に追われ,長い間このブログをお休みにしてきました。この間Twitterのつぶやき(右側をご覧ください)でも問題提起を続けてはいたのですが,そろそろブログ本体も再開しなければと考えているところです。その手始めに,今回は,近刊『99%のための経済学【教養編】――誰もが共生できる社会へ』(新評論)についての自著紹介文を転載します。PR誌『新評論』2012年11月号(234号)に掲載されたものです。文語体ですが,ご容赦を。

なお,この自著紹介の文章のあとに,最近お気に入りの歌"Las cosas que amas"(「あなたが大好きなこと」)にリンクを張っておきます。アルゼンチンのロッカー,ロレーナ・マジョールさんが,やさしく日常生活の機微を歌ったもので,勤務先でひとつだけ担当しているスペイン語の授業でも紹介しました。とても素敵な曲ですよ。

以下,拙著紹介文です。

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内橋克人さんとの共編著『ラテン・アメリカは警告する――「構造改革」日本の未来』(新評論2005年)を世に送り出し、新自由主義の危険性を訴えてから7年。政権交代後の今も状況はほとんど変わっていない。従来の「構造改革」路線は改めて更新され(TPP協議への参加方針;税と社会保障の一体改革)、大震災と原発事故の被害も十分には補償されないまま、相変わらず自己責任と自由放任の冷酷な政治がまかりとおっている。

「格差社会」の構造は手つかずのままであり、象徴的に「1%」と呼ばれる一握りの富裕層が法外な利益を得ている反面、「99%」、つまり圧倒的多数の庶民の暮らし向きはさらに悪化してきた。自殺や孤独死も高止まりしたままだ。文字通り共生を阻み、多様な生の可能性を狭める仕組みが、現在も持続しているのである。

いま必要とされているのは、この悪しき構造を真正面から暴き出し、その変革の方向性を提起する「99%のための経済学」にほかならない。それはまた人々の共生とその質的向上、そして人間と環境の調和を目指す、「共生経済学」でもなければならない――こう見定めて2011年秋、市民向けのブログ『共生経済学を創発する』を始め、グローバルな視点から、経済とその関連領域について様々な問題提起を重ねてきた。

TPPや一体改革などの批判は当然だ。ほかには「新自由主義サイクル」と「原発サイクル」の類似性、子供も洗脳しかねないネオリベラル・マスメディアの批判、独裁的な「おまかせ民主主義」の批判、アルゼンチンに学ぶ「非正規雇用を減らす方法」、共生経済社会への転換構想、債務危機の下で広がるギリシャの共生経済(地域通貨)など。このうち「おまかせ民主主義」批判は、幸いすでに脱原発運動などでも利用されている。
 
 以上を編集し、体系的にまとめ直したのが本書である。ブログと同じく口語体であり、予備知識がなくても読み進められるようになっている。近刊『99%のための経済学【理論編】』と併せてご一読頂ければ幸いである。
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自著紹介は以上。ロレーナ・マジョールさんの曲へのリンクはここです(^^♪ →http://www.rock.com.ar/videos/las-cosas-que-amas-lorena-mayol/